You could not be born again

ユキヤナギが、通りかかる人間を誘うように、小さな白い花でいっぱいになったその枝々を次々に伸ばしている。MSKと二人で『永遠のマリア・カラスを見る。私は二回目。過去はもはや過去でしかありえない、にもかかわらず、その過去を切り離して今からここからだけの自己を生きることもまた許されてはいない、と諦める/明きらめることができた人のように描かれている。白い鍔広の帽子を被ったマリア・カラスが、新生したかのように、溌剌とした表情で車から降りてくるシーンがいい。見終わってから思い出しても、この画面からは、人生の虚しさよりも、前向きに生きようとする人間の美しさのほうを、より強く印象づけられていたことがわかって、嬉しくなれる。マレーシアからの帰りの機中で見たマリア・カラス 最後の恋』より、こっちのほうがモアベターよ、とは(小森和子じゃなく、もちろん片岡鶴太郎でもなくて)MSKの言。

永遠のマリア・カラス [DVD]