KOZU Harushige, Ancient Greece
『古典ギリシア』(高津春繁、講談社学術文庫、2006年*1、ISBN:4061597973)を読み始める。
現世主義者の彼らには世を捨てて逃避することなどは考えもせぬ。うつろいやすければこそますます急がねばならぬ。ここに彼らの厭うべきヒポクリシー[偽善]、虚偽、拝金主義、権力への渇心が生ずる。恐るべき弱肉強食の思想が培われる。個人主義が現われる。ギリシア人はホメロスにおいてすでに虚偽に対して道徳的な嫌悪をあまり感じない国民である。神々は詐りを常套手段としている。智の神アテナは虚偽の女神である。オデュッセウスは智において万人にまさる英雄であるが、彼の智の大きな部分は平気で人をだますことにある。ギリシア人は自ら悧いと信じていただけに、人にだまされることはその遅鈍の証とはなっても、正直の証とはならなかった。富に対する執着も古くかつ強い。(p58)