YAMAGUCHI Masao, anthropology

『学問の春』山口昌男平凡社新書、2009年、ISBN:4582854796)を読む。

  • さまよえる学者たち

 それが唐突な考え方ではない証拠に、ヨーロッパ中世にフランソワ・ヴィヨン(1431-63?)という詩人がいました。この詩人は詩の先生と共にヨーロッパの大学を渡り歩いて、無頼の限りをつくしながらバラッドの詩編を残した。「放浪教授・学生団(ワンダリング・スカラー)」、フランスの中世にはそういう知のスタイルが存在していた。彼らは知識人というよりは、反社会的な狂人や道化に近く、警察権の外部にいたのです。放浪しながら、食べていくためには時によっては強盗やカッパライも働いた。先生がたとえばリヨンの大学に草鞋を脱ぐ、そうしたら学生もそこにいっしょに草鞋を脱ぐ。先生がどこか別の土地へ移動したらまたいっしょに移動する、そういうユニット、放浪する学びの徒党というものをつくったんですね。このことに関しては日本語に翻訳は出てないけれどヘレン・ウォデルのThe Wandering Scholars(『放浪する学者たち』)という本があります。p36-37


新書479学問の春 (平凡社新書)