The correct way of living with ghosts

  • 『トロイ』Troy(2004年、米・マルタ・英、ウォルフガング・ペーターゼン監督)→もはや「神々」の世界ではない。アテネペレウスの子の黄金色の髪を掴んだりしない。「半神」も自分の名誉のためにだけその死に時を、死に場所を探している。それでも、いや、だからこそ?名もない人々のあいだで「神」は生き延びるのかもしれない。砂浜で駿足を絵にするのは難しそうだ。息子の死を予言するアキレウスの母テティスが首飾りにする貝殻を拾う海の青さがまぶしい。
  • プレステージThe Prestige(2006年、米・英、クリストファー・ノーラン監督)→「W」が、つまりは「もうひとりの自分」が、存在することによって生み出される成功とそれを超えて余りある悲しみ。やっぱり、消える小鳥たちは死んでいたんだね。クリスチャン・ベールヒュー・ジャックマンも「自分ではないほうの自分」を巧演していた。ただの物質ではなく生命を複製する技術、しかも細胞のようなレベルにおいてでなく人間の成体に対してでさえまるごと一挙にそれを可能にしてしまう技術を、あのテスラがすでに発明していたとは。
  • タロットカード殺人事件Scoop(2006年、英・米、ウディ・アレン監督)→この映画、ユーレイを面白く登場させているのだが、何より英国の特権階級のような連中こそがユーレイなんだよと、うまく皮肉っているような。もちろん、米国の庶民コンビたちのショボさと対照させて、彼らの豊かな暮らしぶりをたっぷり丁寧に描きこみながら、である。前作の『マッチポイント』でも、ユーレイが目に見えるかたちで画面に映し出されていたけれど、あの映画も決して一見そう思えるようなピカレスクではなくて、ユーレイを見ている人間こそがユーレイ的存在なんだけどね、と呟いていたのだな、と。それから自動車を運転しての衝突死だとか、湖上のボートからの突き落としだとか、アルバートホールを背景にした殺人事件だとか(さすがに「ケセラセラ」は聞こえてこなかったけど)、映画史へのオマージュ的シーンも楽しめる。

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