The Way to Paradise, Mario Vargas Llosa, Tristan, Gauguin

楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)
『楽園への道』(世界文学全集 1-2) (マリオ・バルガス=リョサ、田村さと子訳、河出書房新社、2008年、ISBN:4309709427)を読む。フローラ・トリスタンとポール・ゴーギャン。祖母の死後に生まれた孫は、直接には祖母を知らない。
女性や労働者たちの権利獲得に向けて社会的使命に燃える女と芸術的自由に向けて自己を解放し野生に生きようと試みる男。自由と連帯への旅にはいつも、孤独と貧困という家郷が、屈強で頑迷な従者のように付き従っている。共通の敵は、ヨーロッパの近代であり、キリスト教であろうか。彼らの性に対する態度は、対照的で正反対にも見えるが(フローラはマフー(両性のあわいを生きる存在)を認めただろうか?)、性のほうは等しく彼らに重荷を背負わせていたのだった。それでも、知恵と力と勇気の子には強く力づけられる(ふたりともに、死ぬまで「小供」の部分をずっと持ち続けていたのだったね、フロリータ?そしてコケ?)。
楽園を「次の角」に求めてしまったら、そのまた「次の角」と、それは永遠に届かないものになってしまう。そうではなく、楽園は「への道」にある(つまりは「いまここ」にこそあるのだったね、フローラ?そしてポール?)。過去と訣別できたわけでもなく、かといって、いつかどこかにという未来へのロマンに生きたのでもない。目の前にある理不尽や通念に憤り抗いながら、現在のリアルをこそ生きる、そんな二人な気がした。それから、伝記的史実をよく知らなかったせいで、小説に描かれていることがすべて事実であるかのように読めたのも楽しかった。