Measuring the World, Daniel Kehlmann, Gauss, Humboldt

『世界の測量 ガウスフンボルトの物語』(ダニエル・ケールマン、瀬川裕司訳、三修社、2008年、ISBN:4384041071)を読み始める。対位法的に書かれているのは、『楽園への道』と同じ。時代は少し遡る。近代化が「急拵え」だったのは、日本ばかりではない。フランスやドイツでもやはりそうだったのだ。明快で硬質、ドライな文体。原書のドイツ語がもともとそうなのか。
ガウスフンボルトが世界を「測量」しようとするその方法は、きわめて対照的である。彼らはそれぞれに独自のスタイルを倫理的かつ享楽的に貫くことになるのだが、そこから浮かびあがってくるのは、二人に共通する「知る」を求めてやまない、異様な熱塊とでもいうべきものである。
実際、歴史上疑うべくもない偉人である二人ではあるが、作者は、爵位や才能といった、社会や自然によってたまたま与えられたに過ぎない自らの特権性に、無自覚なまま無邪気に振る舞う彼らを−−(ドイツ人には似つかわしくない?)ユーモアでもって?(二人の老衰老醜ぶりもまたユーモア?イロニーさえ超えちゃってる気がしますが)−−相対化することも忘れない「近代」的な作家である。したがって当然、自分自身をも相対化−−こちらはイロニーでもって?−−してみせる場面もまた、用意されていたりするのである。

世界の測量 ガウスとフンボルトの物語