KAWADA Junzo, anthropology
『文化の三角測量』(川田順造、人文書院、2008年、ISBN:4409530380)を読み始めて、同じ著者の「時代と学問−−学問は世の役に立つか」(『人類の地平から』(川田順造、ウェッジ、2004年、ISBN:4900594741)所収)を再読したり。
それまで私が頼ろうとしていた自然科学的実証主義では脱落してしまう倫理的主体としての「私」、自覚された主体としての「個」である「私」を、「私」および「私」以外の「私」の集合の総体としての社会との関係でどう位置づけられるのか、そのとき民俗、様式、伝統、文化は「私」や社会にとってどのような意味をもつのかを、知りたいと思ったのです。角度を変えて言えば、「政治的なもの」への不信によって疎ましいものになった、社会と「私」を結ぶ絆を、「政治的なもの」に代わる何かで回復しようとするとき、民俗、様式、伝統、文化などが、ある安らぎを感じさせる確かさで、たち現れてくるとも思えたのです。p198